GAMBLE OF 「XXX」



「アンタ、華武高校の御柳サン?」

「あぁ?」

久しぶりの正々堂々の休日。
御柳芭唐は、夜の街をぶらついていた。

何で暇を潰そうかと思案していたその時。

聞き覚えのない男の声が耳に入った。


振り向くと、オールバックの髪を少し乱して後ろで束ねた、まあそこそこ顔の整った奴。
多分同い年くらいだろうが、特に見覚えはない。

「何だ?誰だよ、アンタ。」


どうでもいい奴だが、人の名前を呼んだワケくらいは聞く時間はある。

最近、ある人物に心を奪われたおかげで
今まで時間を最も費やしていた女遊びもできなくなっていたのだから。


すると目の前の男は少し笑って言った。

「アマクニに会いに行かないか?」


その言葉を聴いて、御柳は目を見開く。


アマクニ…猿野、天国。


それは御柳の想い人の名前だった。




########


「いらっしゃいませ…ああ、健吾くん。
 それと…そちらの子は?未成年でしょ?」
「こんにちはエミさん。こいつは天国の知り合いっす。
 天国いますか?」

「ええ、もう戻ってくるわ。
 お客様にまた捕まってたみたいだけど。」

男が連れてきたのは、ホテルの最上階にあるバーカウンター。
御柳も何度か(年上の女性に連れられて)こういった場所に来たことはあるので
気後れするということはなかったが。

それでも流石に驚いてはいた。
アイツに会う場所としてはどうしてもそぐわないと思っていたから。

それに客に捕まっていたとはどういうことだろう。
まさかここで…?

いろいろ悩んでいると、男は御柳を窓際のテーブルに誘った。
御柳は断る理由もないが男二人でテーブルという状況に少し抵抗を感じつつも。
男の真向かいの席に座った。

すると、男は口を開く。



「ここは天国のバイト場所。
 んで、オレは十二支高校の報道部員で天国の鬼ダチだ。
 名前は沢松健吾。
 アンタの事を知ってたのは華武高校との練習試合にオレも取材で行ったから。
 その時にアンタの天国を見る眼が変わって言ったのに気づいた。
 それについて言いたいことがあったから、偶然アンタを見かけた時に
 これ幸いとここまで連れてこさせてもらったってワケ。

 他に聞きたいことは?」

一気にまくしたてられ御柳は驚くが。
内容は御柳が聞きたがっていたことを網羅していた。
 
「……ねえよ。」


御柳は聞きたいことを全て先まわしに言われ、
どこか悔しいような恥ずかしいような…そんな気分になった。
つまりは不愉快に思ったわけだが。

御柳は気分のままにそっぽを向きながら。
前に座る男…沢松に話を促した。

「で、言いたい事ってのをさっさと言えば。」

すると、沢松は今まで浮かべていた薄い笑みを消した。


「アンタが天国を欲しがってるのは知ってる。」

沢松の眼は挑戦的だった。
御柳は視線を戻すと、その瞳にぶつかる。

「…だから?
 アンタもなんだろ?」

「ああ。」

御柳も沢松と同じ色の眼になる。

お互いに譲るつもりはない。
その意志がはっきりと伝わっていた。



「ま、そのあたりはっきりさせときたいと思ってな。
 ライバル宣言ってワケじゃないが…。」

沢松は徐にポケットからコインを出し。

頭上に跳ね上げると。



パシッ


手の甲で受け止めた。



「The face or the back?(表か裏か?)」


「な?」


「アンタのお得意分野だろ?
 Gamble…一勝負、ってな。」

宣言がわりに一勝負ということか。
意味はなくとも…御柳もこんな戯れはキライではない。

むしろ…。


「望むところだ。」


御柳の言葉に、沢松はに、と笑った。


「Choose whichever you like better.(お好きな方を。)」


「The face…。(表)」


「OK…。オレはbackで…。」


沢松はゆっくりと手の甲を外した。


その時。


多量のコインが沢松の手に落ちてきた。



「なーにつまんねえ勝負してんだ?」


「天国…お前な…。」
「猿野!」


「ああ?何だよ連れって華武かよ!?
 すげえ珍しいな。」

「…たまたま会ってな…。」

「…おう、久しぶりだな…猿野。」


「ああ。それよりコイントスなんざつまんねーだろ?
 ちょうど開いたし暇つぶしにポーカー付き合え。
 いいな?」

天国は有無を言わさずトランプを取り出した。

その様子に、二人は苦笑しつつ。


「「OK。」」


流れた勝負の決着は、彼に委ねることにしたのであった。


一瞬では決まらない長いゲームの開始である。


勝利者は目の前の彼のみぞ、知る。




おまけ


ちなみにこの日の勝負は天国の圧勝だった。


まだまだ君にはかなわない。



                                          end



なんだか起承転結のはっきりしない話になりました…。
二人を眼一杯カッコつけられるようにがんばったんですが…。
結局勝者もいないありさま。

すけあ様、散々お待たせしてこんなのですみませんでした!!
本当に長いことお待たせしまして…申し訳ないです…。


素敵リクエストほんとうにありがとございました。
こんな奴ですが、まだまだミスフルは続けますので…。(^^;)


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